Running and Thinking 松本唯人ブログ

12歳から一人旅を始め、日本全国・海外20数カ国を旅した松本唯人(23)のブログ。台湾自転車旅やイスラエル、キューバ旅など、旅先での情報や日本人留学生のインタビュー記事を不定期で更新しています。近況はinstagram(@yuito.mtmt)で更新中。普段は株式会社TABI LABOでライターとして働いています。

【台湾一周自転車旅】「自分を変えたい」。宮崎・日向学院の男子高校生は、その思いを胸に台湾へ渡った/日本人留学生インタビュー×高雄・義守大学(Day5・特別編)

LINE電話の受信音に、叩き起こされた。現地時刻は、午前3時。アメリカのカリフォルニアに滞在していた3年前の夏休み、大学1年生の夏を地元で過ごしていた中学時代からの親友が、久しぶりに会った同級生たちの近況を連絡してきた。その中で、ずっと気になっていた「近況」があった。

「あいつ、半年間で中国語を習得して、これから台湾の大学に行くらしいよ!」

 

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親友によると、僕たちの高校時代の同級生が日本の大学ではなく海外の、それも台湾の大学に進学するというのだ。時差をまったく気にしない親友からの連絡を、半分眠りながら聞いていたのだけれど、物静かな同級生の衝撃的な「近況」を聞いてパッと目が覚めた。

それ以来、なぜ彼が台湾の大学へ進学したのか、ずっと気になっていた。そして今回、ようやく彼に再会することができた。
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●「日本人留学生インタビュー×義守大学・福井達貴くん」

宮崎県で過ごした高校時代の同級生、福井達貴(たつき)くんは台湾第二の都市「高雄」の義守大学に留学している大学4年生。高校卒業後、日本の大学ではなく台湾の大学へ進学した。どうして彼は、その進路を選択したのか。3年半ぶりに再会し、お話を聞いた。


●海外へ進学するキッカケ、そしてなぜ「台湾」なのか

松本:お久しぶりです。台北からチャリを500kmこいで、あなたに会いに来ました(笑)

福井:ありがとう(笑)。せっかく来てくれたから、今日はたくさん聞いてね。
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さっそくだけど、台湾に進学するキッカケを聞かせて。大学1年生のころに、福井くんの進路を聞いてから、ずっと気になってた。

 

一番のキッカケは、「環境を変えて、自分を成長させたい」と思ったことかな。自分に自信が持てない性格を、変えたくて。何かに挑戦するという選択肢として、「海外留学」を選びました。

そこで意外なのが、選んだ留学先。どうして「台湾」だったの?

理由はたくさんあるけど、大きく分けてふたつ。中学時代に、中国語の授業があって言語だけでなく中国語圏の文化に触れる機会が多くて、ずっと興味を持っていたから。それに、僕が在籍している義守大学の国際ビジネス学部は、中国語の授業だけでなく英語での授業も活発で、中国語と英語の両方を学べるのが魅力的だったからかな。
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見切り発車の決断と留学までの過酷な「缶詰め生活」

福井くんは日本の大学進学を目指して、受験勉強をしていたイメージがあったのだけど、いつ頃「台湾進学」を決めたの?

高校3年生の2月(笑)

げっ!卒業間際!!(笑)どうして?

進学先を国内か海外にするかで迷っていたから、高校3年生の11月ころに「海外留学」について調べ始めた。情報を集めていると、どんどん留学したい気持ちが強くなって、12月には国内の国立大学の受験に落ちたら台湾へ行こうって決めた。たぶん、この時点で自分の意識は台湾留学に向いていたと思う。結果的に、良くも悪くも国立大学に落ちたので、すぐに台湾へ行こうと思った。

留学を決めて、どのように中国語を勉強したの?

茨城県守屋にある「台湾留学サポートセンター」で、寮生活をしながら、いわゆる予備校生活を始めたよ。3月後半から入学試験までの約半年間、文字通りの「缶詰め生活」で、毎日12時間以上勉強する日々だった。寮は中国語しか使えない規則で、最初は自分の言いたいことが全く伝えられず、ストレスと将来への不安とで、毎晩布団の中で泣いてた(笑)

それでも「台湾に行く」と決めたからには、妥協はできないから、毎日抜け毛や血尿と闘いながら(笑)、頑張りました!数か月間、中国語を必死に勉強して、予備校からの「指定校推薦」の試験に合格し、義守大学へ進学することになったよ。
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予備校からの進学は、「指定校推薦」が一般的なの?

国立でも私立でも、「指定校推薦」での進学が一般的。推薦とはいえ、中国語の授業についていくための語学力、その他にも英語や数学などの教科も勉強しないといけなかったから、大変だった。でも、予備校での努力が自分への「自信」に繋がったので良かったと思う。ただ、もう二度と戻りたくはないかな(笑)

●初心に戻り続ける、留学生活

過酷な予備校生活を終えて、いよいよ留学生活が開始。異国の地での生活に、最初は慣れない部分も多かったと思うけど、自分に自信をつけてやってきた台湾での生活はどうでしたか?

授業初日から、予備校で培った「自信」が見事に打ち崩されました。教授が何を言っているのかも分からないし聞き取れない。友達にも自分の気持ちが伝えきれない。ストレスで、抜け毛と血尿と夜泣きが、また始まった(笑)

でも、僕はかなりの負けず嫌いだから、「負けたくない」という気持ちで、必死に勉強してまずは言語の壁を乗り越えました。
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「諦める」のではなく、試練を乗り越えるために「努力する」ことができる福井くんのモチベーションはどこからやってくるの?僕が同じ状況なら、「諦める」を選択しちゃうかもしれない(笑)

ツラい時は、いつも「初心に戻る」ことを心がけてるかな。「自分を変える」ために留学を選択したという原点を思い出して、「もっと頑張ろう!」と自分を鼓舞する。これを繰り返して、なんとか乗り切ったよ。でも、1年生のころなんかはSNSで同級生たちが日本で楽しそうに遊んでいる写真をみて、「台湾に来たのは間違っていたのではないか」と心が折れそうになったこともたくさんあるけどね(笑)

言語の壁以外には、何か困ったことはあった?

台湾人の主張の強さには、戸惑ったね。特に、僕は自分の意見を主張できるタイプではないから、最初は他人の意見ばかりを受け入れすぎててストレスが溜まった。ある時、我慢が限界に達して、台湾人の同級生と大ゲンカをしてしまった。相手からしてみると、これまで意見を言わなかったのに、突然怒り出されても困惑しちゃうよね。

そんな失敗があったから、今では相手の意見を聞いて、それに対する自分の意見もしっかり伝えるようにしている。少しずつ、自分の意見を言えなかった部分が変わりつつあるかな。

●学校生活と生活費用

留学生活では、授業のない休みの日は何をして過ごしているの?

サッカー部に所属しているから、休みの日は練習や試合に参加することが多いかな。それに、日本の大学生と同じようにカラオケやボーリングで遊んだりもするよ。
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以前は、勉強もかねて中国語を日本語に翻訳するアルバイトをしていた。かなり大変だったけど、台湾でしかできないアルバイトのひとつだったから、とても良い経験になったよ。ちなみに、給料は7時間働いて1500 元(約5500円)。時給が約400円の台湾では、「稼ぐ」ことのできるアルバイトだったかな。

東京で一人暮らしの身としては、生活費が気になります

生活費は、毎月8500元(約3万円)。これに、光熱費込みの寮費が8000円だから、全部で約4万円かな。僕の寮は、ランクが一番低いから一番安い。義守大学の寮には4階級あって、月の家賃は8000円~4万円。最上級の4万円の寮は、大学内にあるホテルの部屋を借りることになるから、そう考えると日本よりも格段と安いかな。
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ここまできたら、全部聞きます。学費も、教えてください(笑)

学費は、年に約30万円。僕の大学は私立だから、国立だともう少し安くなると思う。大学によっては、留学生への給付型奨学金制度があるので、留学の費用としてはそんなにかからないよ。

●4年間の留学を経た、今後の進路

ここまで約1時間、インタビューにこたえてもらいました。高校卒業から今に至るまでの「これまでの話」を聞いたわけですが、「これからの話」を聞かせてください。来年6月に卒業みたいだけど、4年間の台湾留学を終えた後の進路はどうするの?

実はまだ、明確には決めていないけれど、選択肢としては「日本で就職活動」か「コミュニティカレッジで英語の勉強」のふたつかな。

留学後は、日本へ帰国する予定なので、中国語を活かせる企業での就職活動を視野に入れてる。ただ、中国語だけでなく英語習得にも挑戦したいので、英語圏コミュニティカレッジという教育機関で語学学習をしたいという考えもある。

これまでの留学生活を経て様々な環境に触れ、「もっと成長したい」という気持ちが強くなっているので、残りの大学生活でより良く「自分が変われる」選択肢を考えていきたいと思っています。

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●最後に一言

今回、インタビューをさせてもらったキッカケのひとつに、後輩の高校生から「海外の大学生活について知りたい」という要望を受けたということがあります。僕たちの地元の学校でも、福井くんみたいに中高時代から海外留学に興味を持つ後輩たちも増えているようです。

最後に、そんな中高生たちに留学経験者として一言お願いします。

めげない心を用意して、海外留学へ行ってください!(笑)

海外で大学生活を送ることは、ぼんやりと日本の大学に進学するより、絶対に良いと思います。これまで過ごしてきた環境が変われば、自分の視野も広がります。それに、目的を持って留学をすれば、目的を持って留学に来た人たちにも出会うことができ、刺激的な学校生活を送ることができます。

泣く日々の方が多くなるかもしれませんが、「自分を変えたい」「挑戦したい」「成長したい」を求める人には、おすすめです。まずは、自分が何の目的を持って行動するのか、考えてみてください。
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【プロフィール】

福井達貴(ふくい たつき)。宮崎出身。高校卒業後、半年間の中国語予備校生活を経て、台湾・高雄の「義守大学国際ビジネス学部」に進学。現在、4年生。趣味は、サッカー、旅行、レートの変動を毎日見ること。大学では、台湾国内で強豪のサッカー部に所属し、FWとして活躍。卒業後は、日本での就職か英語圏コミュニティカレッジへの進学を考えている。

 

10/30 高雄・義守大学キャンパスにて