大学時代#10「アルバイト経歴」
オチはなくても、ツカミが良ければ、ほとんどの会話は円滑に進んでいくと思います。僕のお話には、基本的に劇的に面白いオチはありませんが(平凡なオチすら見当たりません)、人並み以上のツカミはあるのではないかと勝手に思っています。
先日の集団面接でこんな質問がありました。「アルバイトでの成功体験と失敗した事を教えてください」。さて、この質問でのツカミとはなんでしょうか。おそらく、「どんなアルバイトを行ってきたか」が面接官の関心を引く最大のツカミなのではないでしょうか(僕はそのように思いました)。
- 謎のアルバイト・速読塾インストラクター
成功体験はすぐに見つかりました。僕は、速読塾インストラクターのアルバイトを行っています。速読塾。つまり、活字をより早く読む訓練を行う塾です。新聞の広告などで昼下がりの主婦をモデルとして「1か月ゼロ冊から10冊の読書家に!」などと謳った、世間的に少しばかり胡散臭いアレです(僕がインストラクターを務めている速読塾は、理論に基づいてトレーニングを行っているので決して怪しいヤツではないのですが…)。速読塾の社会的地位や正当性についてはここではさておき、僕はインストラクターになるために研修を受けて1分間に1万字以上を読む事ができるので(日本人の平均は分速500字)、それをネタに「活字情報の処理速度が劇的に早くなりました~」とか「1か月に15冊は読書してます~」などとアピールしました。面接官の反応は、飲食店アルバイトの体験を話している他の学生よりは良かったのではないかと思います。
- 意外と無い、失敗談
問題は、失敗談です。アルバイトで、学んだ事は多いかもしれないけれど、キャッチーな失敗談はなかなかありません。大学1年生の時、お寿司屋さんのアルバイトで、寿司7貫をオジサンにぶっかけてしまった事があります。食事のぶっかけ事故は、飲食店アルバイトでは最大のミスのひとつなのですが、これでもツカミは弱いと思いました。まず、飲食店アルバイトという時点で、他の学生とネタが被ってしまう可能性が高いです。それに、お寿司を浴びせてしまったという程度では、ぶっかけ事故の中でもネタが弱いからです(親しい先輩は、3度も牛鍋のタレをスーツ男性に頭からぶっかけてしまいとんでもない事態を引き起こしていました。これと比べると、いくらの軍艦巻きやまぐろの握りのぶっかけは可愛らしいくらいです。とても反省しています)。そこで、失敗談よりもツカミを重視しました。
- 究極の肉体労働
僕のアルバイト経歴の中で、速読塾インストラクター以外にもうひとつ、聞き慣れないものがあります。養豚場の清掃員です。そう、豚さんのお世話係です。高校卒業後の上京前に、地元宮崎で短期間の養豚場清掃員のアルバイトを行った事があります。
吉祥寺のお洒落なカフェバイト、ルミネのアパレル店員、そして養豚場清掃員。都会の学生たちが柑橘系のフレッシュな香りが漂ってくるような肩書きを並べる中で、これはレアなツカミになったのではないかと思います。
また、養豚場では私たちの食卓へと運ばれてくる数多くの食用の豚さんたちと1日を共にするので、「命」について考える機会にもなりました(僕の実家ではペットとしてミニブタを飼っているのですが、そのペットのブタと比べて食用の豚たちの目には自らの意志のようなものが薄いように感じました。言葉では形容できないのですが、どこか機械的な目が印象的でした)。
実際に、そこそこの失敗(いや、とても大きな失敗)をやらかしていたこともあり、ここではツカミと内容だけでなく質問に対するしっかりとしたオチもつける事ができました(おかげでその集団面接は通過しました)。
- アルバイト収入を一人旅へ
大学生になって、6つのアルバイトを経験しました。ほとんどが飲食店のアルバイトです。理由はただ一つ、まかない付きだからです。「旅費はどうしているの」とよく質問される事があります。実は、僕がするような貧乏旅行なら、アルバイトのまかないで食費を浮かせ(豊富な栄養を摂取し)、毎日学校にお弁当を持参するなどの「徹底的な食費削減」を行えば、アルバイト収入だけで旅に出る事は難しくありません(ただ、日々の生活はかなり質素になります)。
*インド・バラナシ。中国東方航空で成田→ニューデリー間往復約5万円で行く事ができます。1泊50~200円で宿泊可能なので、1か月滞在しても滞在費は2~3万円で済みます(節約すれば、もっと安くで滞在できるはずです)。
*中国・蘇州の宿。中国は、上海や北京などの大都市や観光地を除くと、まだまだ物価の安い国です。地理的に日本から近いので、欧州と比べると航空券も安く、比較的低価格で旅ができると思います。自転車に乗る方は、上海~南京(350km)のサイクリングはオススメです(マスクは持参しましょう)。
*「マスクは持参しましょう」
ですが、1度だけ自分のアルバイト収入だけではどうしても遂行できない、旅計画がありました。2015年の夏の出来事です。その時は「ヨーロッパ・西日本エコツアー」と題して協賛を募り、企業や個人の方々からの支援をいただいて旅に出たわけですが、なぜそのような事を行ったのでしょうか。これは、ここ数年間の自分史を語る上で外す事のできないエピソードであり、僕自身が持つ物事の考え方の基盤を形作ってくれた機会でもあります。次回から数回にわたって、これらの体験について書いていくことにしましょう。