Running and Thinking 松本唯人ブログ

12歳から一人旅を始め、日本全国・海外20数カ国を旅した松本唯人(23)のブログ。台湾自転車旅やイスラエル、キューバ旅など、旅先での情報や日本人留学生のインタビュー記事を不定期で更新しています。近況はinstagram(@yuito.mtmt)で更新中。普段は株式会社TABI LABOでライターとして働いています。

【台湾一周自転車旅】車城で早朝に連れ出された理由は、台湾人サイクリストの「やさしさ」だった(Day4)

朝起きると、相部屋だった台湾人のサイクリストに言われた。
 
 
 
「おはよう。僕のBOSSが待っている」
 
 f:id:yuitoHitoritabi:20171030113555j:plain
 
台湾島西側の街「車城」でも、知らない人と相部屋のホステルに宿泊した。今日は、この街から台湾第二の都市「高雄」まで走る予定だった。早朝5時に起床し、出発前の準備をしていると、前の夜に自転車の話で盛り上がったサイクリストの林さんに声をかけられた。「僕の上司が待っている。すぐ近くだから、荷物をまとめて自転車でついてきて」。高雄までは約90kmと短い距離だったので少しは出発が遅れてもいいかなと思い、言われるままに林さんについていった。宿泊先の近くの広場で、僕を待っていたのは「BOSS」だけではなかった。
 
 f:id:yuitoHitoritabi:20171030113717j:plain
 
林さんに連れ出された先には、約50名のサイクリストたちが準備運動をして待機していた。どうやら、林さんは台湾のサイクリングクラブのメンバーらしい。何が起こるのかと思っていると、僕の自転車を指さして言った。
 
 
 
「新しいボトル入れを、プレゼントするよ」
 
 
 
僕の自転車には、プラスチック製のボトル入れが装備されている。いつもは、そこに水分を入れたボトルをさして、走行中にすぐ水分をとれるようにしている。しかし、自転車旅を行う上で重要なボトル入れが、台湾へ出国する日に破損していた。ガムテープで補強していたものの、ボトルの重さを支えきれず使い物にならなくなっていた。それをみかねた林さんが、クラブの上司に頼んで替えのボトル入れを準備してもらっていたのだ。
 
 f:id:yuitoHitoritabi:20171030113827j:plain
 
f:id:yuitoHitoritabi:20171030114003j:plain
思いがけないやさしさに、何度も「謝謝(ありがとう)」と言っていると、林さんは「サイクリストの気持ちは、僕もよく分かるから」と言ってニコリと笑った。そして、みんなで記念撮影をして、大所帯の親切なサイクリストたちは一足先に「高雄」へと出発した。
f:id:yuitoHitoritabi:20171030113403j:plain
 
  f:id:yuitoHitoritabi:20171030114135j:plain
 
人口が少なく未開発の東側の旅を終え、ようやく西側へとやってきた。「車城」からの平坦な道のりを進んでいくと、遠くに台湾第二の都市「高雄」の巨大なビル群が見えてきた。
f:id:yuitoHitoritabi:20171030114332j:plain
「もう少しで、到着」。台湾人サイクリストたちの優しさを感じながら、ボトルを手に取り粉塵でザラザラした口の中を流した。目の前に立ちはだかる高層ビルを見上げると、まるで砂漠の中に突如として現れたかのような近代的な街の空は、晴れているのに灰色にかすんでいた。
 
 
 
10/29 車城=高雄 90km 4h20m 総走行距離495km

【台湾一周自転車旅】台東の海岸沿いの景色は、慣れ親しんだ宮崎・日南海岸のようだった(Day3)

東の街を抜けると、そこは「日南」だった。

f:id:yuitoHitoritabi:20171029183556j:plain

 
(台東以南の「太麻里郷」からの景色)
 
台湾島の、東側から西側へと向かう。早朝6時にホステルを出発し、峠のふもとに向かって海岸沿いを走る。
f:id:yuitoHitoritabi:20171029182443j:plain
台湾へやってきて4日目、ようやくここが「沖縄より南の島」であることが分かってきた。目の前を流れていく景色は、熱帯気候のもとで育まれる特有の自然。気温は、11月になろうとしているのに20度を超える。そして、なによりも日差しが強い。コートが必要なほどに寒くなった東京からやってきた僕は、この時期でも台湾が「真夏の気候」であるということを、すっかり忘れていた。
 
 f:id:yuitoHitoritabi:20171029181426j:plain
 
日焼け止めクリームを一人暮らしのアパートに忘れたことを悔やみつつも、海を横目に先へと進む。上下左右にぐねぐねと曲がった海岸沿いを走っていると、そこから見える景色がどこか見慣れたものであることに気づいた。
f:id:yuitoHitoritabi:20171029183213j:plain
 
(宮崎県・日南海岸の景色)
 
台東から南下する海岸沿いは、まさに地元・宮崎県の「日南海岸」と同じような、常夏の景色が広がっていたのだ。砂浜にぶつかる波の音、ゆるやかに曲がる海岸線、そして真っ青な空。それらは幼いころから慣れ親しんだ、日南そのものだった。「そういえば、僕のチャリラーとしての長距離デビューは、日南海岸65kmだったな」。9歳の夏に、たくさんの大型トラックが通る国道の狭い側道を必死で走ったことを思い出しつつ、新しく舗装された堤防にぶつかりはじける高く大きな波のしぶきを受けながら、遠くに見える海岸線を目指した。
 
 f:id:yuitoHitoritabi:20171029182158j:plain
 
60kmの海岸沿いの道のりを終えて、峠を上った。約20kmの「寿峠」は、台北=宜蘭間の峠とは比にならないほどのキツさ。急こう配かつ長距離の、山道だった。峠に到着すると、メインの道路からはずれ、昔ながらの村を通る道へと入っていった。哀愁を感じる村落を抜けて、西側最初の街である「車城」に到着した。
 
 f:id:yuitoHitoritabi:20171029182618j:plain
 
10/28 台東=車城 125km 7h30m

【台湾一周自転車旅】台湾・花蓮から台東の自然を走り抜けて感じた「父の思い」(Day2)

「まだ、起きたくない」
自転車旅では「自分との闘い」に勝っているはずなのに、睡眠欲求を主張する自我には勝てない。今日は、そんな朝を迎えた。予定よりも2時間遅れの7時過ぎに、花蓮のホステルを出発し、台東を目指した。
f:id:yuitoHitoritabi:20171028185222j:plain
 
 台湾島東側の中部を縦断するこの道のりは、上ったり下ったりを繰り返し、ずっと景色が変わらない北海道にある広大な農道のようなルートだった。快晴の空のもと、山肌が見えないほどに緑色の草木に包まれた壮大な山や黄金色に輝く稲作の畑を眺めていると、父のことを思い出した。
f:id:yuitoHitoritabi:20171028185435j:plain
 
 
 
●美しい自然に囲まれて、走る
 
進行方向の右側に山、左側に田んぼ。数時間、景色が変わらない。しかも、スムースには進まないけれど、体力を消耗するほどこがなくてもいいような、若干の向かい風。こういう時は自己暗示をかけ、「なんてすばらしいそよ風。きっと私に何かを語ろうとしているのだわ」と、ディズニー映画のヒロインのような精神性になるしかない。
f:id:yuitoHitoritabi:20171028185602j:plain
 
 
 
大自然の中を走っていると、ふと父のことを思い出した。
 
 
 
●「環境を守ることの意味は、とてもシンプルなのかもしれない」
 
僕の父は、「エコロジスト」の肩書きで、環境問題の講演会や大学での講義を行っている。自転車で海外135ヵ国を旅してきた、先輩チャリラーでもある。
 
 
 
そんな父を持ってしまったがために、僕は幼いころから「エコ息子」として生きてこざるをえなかった。中学生になった頃にはエコな生活には慣れてしまったが、それまでは「環境を守ること」を耳にタコができるほど言われている自分が気の毒で仕方なかった(友達みたいに、ファストフードを食べたかったし、豆腐ハンバーグじゃなくて牛肉ミンチたっぷりのそれを食べたかった)。中学生以降は、そんな父の方針を受け入れ今では自らエコ息子としての役割に従事しているわけだが、台湾を自転車で走っていて改めて「環境を守ること」の理由について考えさせられた。それは、国連が提唱するなんちゃらかんちゃらのように複雑ではない、いたってシンプルなものだった。
 
 
 
「この景色、いつまでも見ていたい」
f:id:yuitoHitoritabi:20171028185736j:plain
 
 
 
僕の心を和ませ、感動を与える美しい自然をこれから先もずっと見ていたいと思ったのだ。そして、僕より何倍も多くの自然の中を走ってきた父もまた、この感覚を原点にしているのではないかと思った(僕なりの予測に過ぎないけれど)。これまでの自転車旅では、自然を見て美しいと思うことは幾度となくあったけれども、「父」を思い浮かべることはなかった。子や孫の世代にも見てほしいと思えるほどの台湾の景色が、僕に旅を通して教育をしてくれた父の本質的な「思い」を気づかせてくれたのかもしれない。
f:id:yuitoHitoritabi:20171028185900j:plain
 
 夕暮れと同時に最後の上り坂を越え、日が暮れ真っ暗になった18時に台東に到着した。「明日は、時間通りに出発しよう」。街外れの洒落たホステルの扇風機で、風呂上りの日に焼けた肌を冷ましながら、ぼんやりと誓った。
 
10/27 花蓮=台東 170km 8h20m

【台湾一周自転車旅】台湾・宜蘭を一望できる峠の先にある「自転車旅の醍醐味」(Day1)

台湾自転車旅2017が始まる。初日は、「台北=宜蘭=花蓮」だ。
 
f:id:yuitoHitoritabi:20171027205238j:plain
 
 
 
台湾島1周するにあたって、2回だけ山道を走行し峠を越えなければいけない。その2回のうちの1回は、台北=宜蘭間にある。公式のサイクリングガイドなどでは、台北からスタートし「西回り」で1周するのを進めているため、多くのサイクリストたちは旅の後半で「峠」に遭遇する。僕は「東回り」のため、前半が踏ん張りどころである。
 
 
 
初日からハードなルートにはうんざりしていたが、その曇った感情を一瞬で晴らすかのように峠を越えた先には、僕のチャリラーとしての「醍醐味」があった。
 
 
 
●緩やかに上る40km
 
台北のホステルを出発したのは、午前6時過ぎ。通勤や通学の時間帯で道路が混雑している台北市内を抜け出し、徐々に山間地域へと進んでいった。とはいえ、まんべんなく民家があり(セブンやファミマなどの日系コンビニエンスストアも多かった)、西回りの多くのサイクリストたちが通り過ぎていったため、「人の生活音」が途絶えるということがなく、精神的に孤独に陥ることなく走行できた(長距離走行の時は、いかに精神的な孤独から抜け出すかが重要なのだ)。
 
 
 
今回の峠は、約40kmの山道を上った先にある。距離としては長いのだけれど、「緩やかな山道」だったため、ジワリと自分を追い込むことが好きな僕には、もってこいの峠越えだった。ガイドブックがいうほど大変な坂道ではなく、短距離だけど急こう配の「箱根」の方が、キツいという印象だった。
f:id:yuitoHitoritabi:20171027211555j:plain
 
 
 
「なかなか峠に達しない。やれやれ」と思っていると、少し先に峠を指す看板が見えた。足の疲れを一瞬で忘れ去り、無我夢中で山道のてっぺんへと進んでいった。峠に到着しホッと一息ついて顔をあげると、休む間もなく「峠の先」にあるものが僕の高揚感を最高潮にまで押し上げた。
f:id:yuitoHitoritabi:20171027205616j:plain
そこには、太陽に照らされた真っ青な太平洋と宜蘭の田園地帯が広がっていたのだ。
 
 
 
 
●チャリラーの醍醐味、それは「海原」との出会い
f:id:yuitoHitoritabi:20171027205928j:plain
 
自転車旅で見る、峠越しに広く輝く「海原」ほど感動するものはない。自分の体力の限界を超えながら走り切ってから見るそれは、達成感と高揚感が交じり合い、しばらく呆然と立ち尽くしてしまうほどに見入ってしまう。これぞ、チャリラーの醍醐味であり、自転車旅で得ることのできる魅力なのではないだろうか。
 
 f:id:yuitoHitoritabi:20171027210234j:plain
 
太平洋を横目に田園地帯を走り、宜蘭に到着した。宜蘭市街地から約20km先にある、花蓮行きの電車が出発する駅まで走行した。宜蘭=花蓮間は、断崖絶壁で自動車道路しかなく自転車で走行するには危険だったため、電車を使う。台湾を一周するサイクリストたちに配慮し、この間だけは電車内にそのまま自転車を持ち込むことができる。
 
サイクリングツーリズムを推進する、自治体の(GIANTの?)政策への本気度がうかがえた。日本の地方都市でも、ガラガラの電車をそのまま運行するのではなく、サイクリストへの解放(もちろん、ツーリズムが行われていることが前提となるが)すれば、より多くの観光客を誘致できるのではないだろうか。
f:id:yuitoHitoritabi:20171027211122j:plain
 
 
 
電車に揺られて80分。花蓮に到着した。
 
 
 
10/26 台北=宜蘭 110km 5h50m

【台湾一周自転車旅】台北からスタートする「環島」の始まり。距離は約900キロ(Day0)

1年半ぶりに、海外での自転車旅が始まる。前回は、20165月に父と走行した中国・上海~南京350kmの旅。そして、今回の旅先は台湾。欧州へ行くときの乗り換え地としては何度か立ち寄ったことはあるけれど、正式に入国するのは初めての場所だ。「自転車で旅しやすく、航空券が安い場所」ということで、行くことを決めたのだが、隣国とはいえ意外とイメージがわかなかった。僕は旅の準備として、いつも地図を見て地理や国の外観を知ることから始めるので、まずはGoogle Mapsで検索してみた。
 
 f:id:yuitoHitoritabi:20171026205500p:plain
 
 
 
めっちゃ、近い。
 
驚くほど近い、台湾。日本の最西端・与那国島からは、目と鼻の先ほどの距離ではないか。九州を経て、琉球文化の沖縄を越えたその先には、どんな文化圏が広がっているのだろう。
 
 
 
●東回りで、台湾島一周
 
今回、台北から東回りで台湾島を一周する。出発前夜の予定では、こんな感じだ。
f:id:yuitoHitoritabi:20171026205837j:plain
 
 
 
10/26 台北→宜蘭(100km)宜蘭→花蓮(道がないため鉄道で移動)
10/27 
花蓮→台東(170km
 
10/28 台東→車城(115km
 
10/29 車城→高雄(90km
 
10/30,31 高雄宿泊
 
11/1  高雄→嘉義115km
 
11/2 嘉義→台中(95km
 
11/3 台中→台北185km
 
11/4,5 台北宿泊
 
11/6  台北→東京(空の便)
 
 
 
台湾島を一周することを「環島」という。ぐるっと一周できる自転車道路が整備されていて、台湾の大手自転車メーカー「GIANT」がサイクリングイベント開催していることもあり、近年サイクリングツーリズムが盛んとなっている。
 
西側から始める「反時計まわり」のコースが一般的とされているが、日程の関係や疲労がたまる旅の後半で、人の少ない東側の地域を走ることは寂しすぎるという個人的な理由から、今回は「時計まわり」で旅を行う。
 
 
 
台湾観光局が発行している「台湾一周サイクリングガイド」によると、東側は山間地域を通ることが多く難易度が高いとされているため、僕の旅程だと前半が難易度が高く、後半は比較的に楽なコースになる。
 
 
 
長距離自転車旅を海外で行うのは、15歳の時の「スペイン自転車旅」以来で、約7年ぶりとなる。写真はデジカメからスマホへ、道のりは紙の地図からGoogle Mapsへと変わり、旅を効率的に行うことができるようになった。利便性が高まった新しい旅のカタチの中で、あえて自転車で旅する魅力について考えてみる。どうせ出発からの数日間は、一人ぼっちの山登りサイクリングになる。長く続く山道に叫び(キレ)ながら、自分の限界を越えることの悦びを感じながら、ペダルを踏み進めていこう。

【台湾一周自転車旅】高校生からのとあるメッセージで決まった、台湾自転車旅のテーマ

明日から始まる「台湾自転車旅」のテーマを考えていた時、高校生からあるメッセージが届きました。

アメリカの大学は、どんな感じでしょうか?」

f:id:yuitoHitoritabi:20170515195622j:plain

サンフランシスコ・ゴールデンゲートブリッジ(2014年9月撮影)




送り主は、宮崎県の高校生。以前、学校で開いてもらった僕の授業に参加していた男子高校生でした。彼は、今年の夏に学校の研修でフィリピンへ行ったということもあり、漠然と「海外の大学」への興味を抱き始めた様子です。そして、たまたまSNSで繋がっていた現役大学生(というには、いささか老け顔だけれど)の僕にメッセージを送ってみたようです。

●「ごめん、知らない」
僕のことを思い出して連絡をくれたのは嬉しかったけれど、返信に困ってしまいました。なぜなら、僕は人に語れるほど長期的な留学経験がなく、僕自身も「アメリカの大学って、どんな感じなのだろう」と思っているくらいだからです。

とはいえ、後輩の質問に答えないわけにはいきません。苦し紛れの策として、海外に住む日本人留学生のブログを紹介し、「これを読めば、なんとなく分かるはず…」と返信しました。彼は「わかりました、ありがとうございます」と言っていたけれど、どこか腑に落ちない様子。後輩の素朴な疑問に、ちゃんと返答できなかった自分に落胆していると、ふと思いました。

「この不甲斐なさを、台湾旅のテーマにしよう」

●「海外の大学」について発信しよう

今回のテーマは「台湾の大学×日本人学生」です。台湾を自転車で旅しながら、台湾の大学へ通う数名の日本人学生にインタビューを行い、このブログで記事化する予定です。

f:id:yuitoHitoritabi:20171024222316j:plain

仏・ストラスブール大学。好きな社会学ピエール・ブルデューが教鞭をとった大学(2016年3月撮影)


「海外で学ぶこと」が身近になっている現在、アメリカやイギリスなど西欧諸国だけでなく、アジア地域の「大学」に関心を持っている人もいるはず。後輩の質問には答えられなかったものの、今の自分にできることは台湾の大学について発信することなのではないでしょうか。そんな経緯から、今回のテーマが決まりました。

僕自身も、日本の高校を卒業後、国内ではなく海外(それも、台湾)の大学へ進学した同世代たちが、なぜその選択をしたのかにも興味があります。また、去年の5月に中国・上海と南京の大学を訪問した際、日本の大学に通う僕たちとは異なるライフスタイルで生活している現地の学生たちの話が、とても面白く興味深かったのを覚えています。

f:id:yuitoHitoritabi:20171024220013j:plain

中国・南京林業大学前にて(2016年5月撮影)

まずは、この2週間で旅についてだけでなく、台湾の大学についても発信していきます。そして、これを機に帰国後も「海外の大学」についての情報を発信できれば良いなと思います。それについては、後日考えていくことにしましょう。

では、台湾自転車旅のスタートです。

 

【台湾一周自転車旅】台湾行きを決めた日

ANAで5万6千円。

 

JR東北本線福島行の電車に揺られながら、スマホに映る「決済」ボタンをみつめていました。出発が2か月後の羽田~台湾便の航空券は、時間がたっぷりある大学4年生のバイト代で生活費に支障なく購入できる額でした。「決めた、次は台湾だ」。何かをこんなにも即決したのはいつぶりだったでしょうか。自分の進路がどうなっているか分らない空白の2か月後に、自ら予定を組み込んだ瞬間は、不安よりも旅を決めた時に生まれるいつもの高揚感でソワソワしていました。

f:id:yuitoHitoritabi:20170909170053j:plain

 

  • 女川からの帰り道

8月中旬に、宮城県女川町へ行きました。現地で開かれた詩人・高村光太郎の詩の朗読会で『道程』を朗読した体験。女川の人々が未来へ向けて日々「動いている」様子。ゼロから生まれ変わりつつある町を歩いたこと。女川で過ごした日常が、僕の中で消えかけていた熱意に再び勢いを与えてくれました。

 

4月に就職活動戦線から離脱して以来、モヤモヤとした日々を過ごしていました。そんな僕を女川での体験が励ましてくれます。

 

「僕の前に道はない」。初めて人前で朗読した、詩『道程』の一節。「私は、来年もその先も続けます」。失われかけた日常を取り戻すために朗読会を毎年主催する女性の言葉。それらの言葉を聞いていると、モヤモヤとした日々から抜け出す手段が見えてきました。

 

「動かなきゃ」

 

  • 原点は「旅」

僕の前に道はない。次にこのような一節があります。

 

「僕の後ろに道は出来る」

 

僕の後ろに道を築いてきたものはなんだろう。鈍行列車に揺られながら考えていました。何度考えても、たどり着く答えは同じです。「旅」しかありません。就活を失敗したからといって、引きこもっていては何も変わりません。むしろ、挫折した時だからこそ積極的に動かないといけないのでしょう。正直、そんなことはずっと前から気づいていました。ただ、ずっと動けぬままでした。腰をあげるのが怖かったのかもしれません。周りの目が気になっていたのかもしれません。それらの不安要素の全てを、女川での体験が吹き飛ばしてくれました。

 

  • 発信力と共有力のある旅にしよう

航空券を購入した瞬間、僕の2か月後の予定が決まりました。4月以降、進路も決まらず先の予定も特になくフラフラしていました。そんな不安定な生活に、台湾行きの往復航空券が終止符を打ってくれました。

 

「どんな旅にすれば面白いだろう」

 

今の自分から脱却するためには、これまでの旅をグレードアップしなければいけないなと思いました。そこで、今回は「発信力」と「共有力」に力点を置いて旅をします。僕は、自分の何気ない行動が価値を生むことができれば良いなと日々思っています。自転車旅・台湾編も、僕の何気ない旅ですが、それをSNSやブログで発信し旅の体験を多くの人に共有してもらうことによって、何らかの価値が生まれると面白いなと考えています。

 

とはいえ、どうすれば他者から見て面白い旅になるのか、どうすれば僕の色を旅に着色できるのか分かりません。ただ、少し先に旅が待っているという、この高揚感は久しぶりです。少しずつではありますが、道のない僕の未来から道しるべとなる明かりが見えてくる気がしています。

f:id:yuitoHitoritabi:20170909165838j:plain